—
「(約)50kWシステム一式X,XXX万円! XX年でモトがアルよ!」などと、容量についてはさらりと流されてしまうことも多い今日このごろですが、今回はこの「容量」について。
太陽電池モジュールが直流の電気を発電して、パワーコンディショナがそれを交流の電気に変換しています。太陽電池モジュールの容量もパワーコンディショナの容量も、いずれも単位はkWです。では、いわゆる「50kWシステム」の場合、どちらの容量が50kWなのでしょうか。正解は・・・
わかりません。
たぶんどちらか「だけ」が50kWなはずです。きっと大きい方が50 kWでしょう、広告ですし。
低圧連系ができる条件は、太陽電池モジュールの容量とパワーコンディショナの容量のうち、少ないほうが50kW未満で、その条件をみたすように「(約)50kWシステム」が設計されているはずです。
両方が50kW以上だと、
- 高圧で連系する必要があります。(キュービクルの設置が必要です。)
- 電気主任技術者の選任や保安規定の届出が必要になります。(2MW未満なら電気主任技術者の外部委託が可能ですが。)
- 計画の段階で電力会社と接続協議が必要になります(検討費用20万円+消費税)。
・・・といろいろと面倒なので、両方が50kWちょうど!といったシステムはまずないのではと思います。
さて、という話はおいておき、太陽電池モジュールが(約)50kWなのか、パワーコンディショナが(約)50kWなのか、どっちが「(約)50kWシステム」と名乗るのが正しいのかわからんという現状では、以下の両方が「50kW」と名乗っている可能性があるわけです。
・太陽電池モジュールは60kW・パワーコンディショナは49.5kW
・太陽電池モジュールは50kW・パワーコンディショナは40kW
上と下とでは、上が2割ほど大きなシステムであると言えます。しかし、売る側があまり意識はされない(あるいはあえて触れない?)ようで、広告にも「50kW」とひとくくりにされていることが多いように思えます。いろいろな見積りを比較検討される際には特に、また、そうでなくても、お買い求めになる際には、太陽電池モジュールとパワーコンディショナの両方の容量をよく確認したいものです。
次に、太陽電池モジュールとパワーコンディショナの容量はどう決めればよいのか、そのバランスはどの程度がいいのかを検討してみたいと思います。
一般に、太陽電池モジュールによる発電電力のうち、パワーコンディショナの出力になる電力は、太陽電池モジュールの容量の70~75%程度と考えられます。これは以下の理由によります。
・仕様上の容量はSTC (Standard Test Condition)で発電電力ですが、STCでのセル温度は25度と決まっています。
- 結晶系の太陽電池の場合、セルの温度が1度高いと出力は0.4~0.5%程度落ちます。(20度高いと8~10%)
- 太陽電池セルの温度は、JIS C 8907での発電量の推定では、18.4度(架台設置型=いわゆる野立て設置の場合)、21.5度(屋根置き型)を加重平均太陽電池モジュール温度上昇として見込んでいますが、実際、セルの温度は「気温+10度~40度程度」になるというデータがあります。(季節や条件によります。)
以上より、冬の昼間時の気温が15度、夏の昼間時の気温が35度とすると、セルの温度は25度~75度と考えられます。期待できる発電電力は冬の昼間でモジュール容量通り、夏の昼間で容量の75~80%程度と考えられます。さらに、太陽電池モジュールの表面の汚れ等によるロス、太陽電池モジュールの性質(電圧・電流)のばらつきと直並列接続により生じるロス、パワーコンディショナの入力までの導線により生じるロス、パワーコンディショナでのロスなどがありますから、夏の昼間で65~70%程度、冬の昼まで90%程度、年平均では70~75%程度と考えるのが妥当と考えられます。(某L社さんの資料では73%となっていたように記憶をしております。)
すなわち、「年平均をベースに考えて」「平均から大きく離れた条件(特に冬期)の想定される電流・電圧等が、パワコン等に機材に損傷を与えないと確認した上であれば」あれば、太陽電池モジュール容量100に対して、パワコンの容量は70~75程度でよい、という可能性があります。(50kWのパワコンに対してモジュール65~70kW程度) 「太陽光発電システムの中でパワコンが比較的高い機材であり、将来の修理交換費用も考えると、ここの台数、容量は最小化しておく」「そのくらいつないでも全然大丈夫っしょー」というスタンスであればこれも1つの答えといえるでしょう。
しかし、「年平均をベースに考えて」と書きましたが、当然、年間の中で変動があります。発電電力が上振れすればその電気は捨てることになってしまう可能性があります。「平均から大きく離れた条件(特に冬期)の想定される電流・電圧等が、パワコン等に機材に損傷を与えないと確認した上であれば」と書きましたが、気象データを仮に緻密に収集したとしても、多少の余裕はもっておきたいものです。さらに、一般にパワコンの効率カーブは仕様上の容量の100%入力の場合には(ほんの少しですがグラフの上では視認できる程度に)若干効率(%)が落ちることが多いようです。
捨てる電気よりもパワコンのお値段のほうがもちろん高くはつきますが、上記の余裕をとる、という点を考えると、上記の「太陽電池モジュール容量100に対して、パワコンの容量は70~75程度」(50kWのパワコンに対してモジュール60~70kW程度) よりはもう少しパワコン容量に余裕を持たせて、「太陽電池モジュール容量100に対して、パワコンの容量は80~90程度」(50kWのパワコンに対してモジュール55~60kW程度)が、「捨てる電力も少なく」「パワコンの容量にも余裕があり」「かといって余裕がありすぎということではなく投資金額として妥当」という最適解なのかな、と考える次第です。
なお、実際には
- その場所での気象データ(特に最「低」気温と日射量)→各機器への電流・電圧の想定
- 利用可能な土地の面積・形状と太陽電池アレイの配置計画
- パワーコンディショナの仕様(容量・入力回路数や接続可能枚数)
等により、細かく検討をする必要がありますので、この1ページで乱暴に結論付けられるものではありません。特に、
- 標高の高い場所での設置(標高1,000メートルだと、標高0メートルの地点と比較して気温が5~6度程度低いです)
- 寒冷地(某国とても寒い国の太陽光発電システムでは太陽電池モジュール容量の1.25倍の発電をパワコンの出力側で確認できた例があります。)
では、特にパワコン容量に余裕があったほうがよいといえるでしょう。
—
コメント