50kW(未満)太陽光発電所からの所得は事業所得?雑所得?

個人(法人ではない)の50kW(未満)太陽光発電所からの収入は事業所得か雑所得か。今、ちまたでホットな話題です。このブログ主の直接の知り合い(サラリーマン+低圧連系(全量買取)での売電収入あり)のところに税務署さんがコンニチワという話もありました。

●収入と所得の違い

「収入」は売上、そこから経費などを引いたものが「所得」です。「事業収入」から事業にかかった経費を差し引くと「事業所得」になります。同様に、「雑収入」から事業にかかった経費を差し引くと「雑所得」になります。

●事業所得と雑所得の定義

個人に対する(狭義の)所得税について規定している所得税法では所得を10種類に区分しています。「利子所得」「配当所得」「不動産所得」「事業所得」「給与所得」「退職所得」「山林所得」「譲渡所得」「一時所得」「雑所得」の10種類です。「事業所得」とは、「農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得をいいます。」とあり、「雑所得」とは、「他の9種類の所得のいずれにも当たらない所得をいい、公的年金等、非営業用貸金の利子、著述家や作家以外の人が受ける原稿料や印税、講演料や放送謝金などが該当します。」とあります。( http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1300.htm )

すなわち、「事業所得」か「雑所得」かの判断は、「事業所得」に該当する要件を満たせば「事業所得」、そうでなければ「雑所得」ということになります。

●事業所得とは?

「自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ、反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得」だそうです。( http://www.kfs.go.jp/service/JP/74/05/besshi02.html )

「客観的に認められる業務」というのがイヤラシイですね。客観的に認められなければ(要するに国税庁・税務署が認めてくれなければ)事業所得にはならない、ということです。

●事業所得と雑所得でどうちがう?

収入から経費を引いた金額が所得になる、ということ自体は、事業所得でも雑所得でも同じですが、雑所得は赤字であっても税金の計算上は所得が0円と計算されます。事業所得は赤字となった場合には、その赤字額を給与所得等の所得から控除することができます。( http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2250.htm )

例えば、給与所得(A)と、事業所得の損失(B)がある場合には、(A-B)の額が合計の所得になりますが、給与所得(A)と、雑所得の損失(C)がある場合には、税金の計算上、(C)はマイナスにはできないことになっているので、(A)の額そのものが合計の所得になります。要するに、「事業所得であれば赤字になったときに合計の所得にかかる税金は安くなるけども、雑所得であれば赤字になっても税金は安くならない」というちがいです。

税金をとりたくてしかたのない、いえ、よりよい社会の実現のために日々奮闘される国税庁・税務署としては、「ハァ?低圧連系で50kW・たったの2,000万の投資? そんなの事業じゃなくて雑だよ、雑! 雑収入!」「どうせお前ら、償却しまくって赤字にして給与所得と通算して税金を安くしようって魂胆だろ?」というのが本音なようで、個人の場合は、開業届や青色申告の有無に関わらず、低圧の太陽光発電からの売電収入は50kWが何個あろうが雑!と、上のほうから通達が出ているそうです。(が、個別に判断とかいろんな話もあるようですので、ご自身の責任において税務署にお問い合わせをして、問い合わせをした年月日・回答をくれた方の職名・氏名を控えておく、ICレコーダー等で録音もしておくことをおすすめします。)

また、青色申告の特典、例えば青色申告特別控除は事業所得に対しては適用されますが、雑所得には適用されません。すなわち、同じ収入額があっても、事業所得か雑所得かによって、所得の金額が変わってくることになります。( http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2070.htm )

●グリーン投資減税との関係

資源エネルギー庁のウェブサイトには「「太陽光発電設備」の導入をご検討の個人の方へ」として、「本税制は、青色申告書を提出する個人の方が、太陽光発電設備(10kW以上)を取得し、ご自身の事業の用に供した場合に適用することができる制度です。」と、いちおうあります。( http://www.enecho.meti.go.jp/greensite/green/ )
しかし、自分が「事業の用に供した」とつもりでも、「事業所得」と認めるかどうかは資源エネルギー庁ではなく国税庁だそうです。実にいやらしいですね。事業とみなしませんと国税庁が判断されてしまえば、「事業の用に供した」つもりでも、「事業所得」にはならないという、実にいやらしいことになっています。

●で、実際のところは?

発電所を作られた個人の方々からは「うちは50kWを20個やっている。給料より多く稼いでいるんだから雑とか言うなよ、失礼だな。」「税務署に開業届け出す時に発電事業って書いただろ。」「だいたい資源エネルギー庁が言っている個人でもグリーン投資減税の対象って、個人に対する落とし穴かよ?」など、いろんなまっとうな意見もあるようです。

しかし、金をとりたくてしかたのない、いえ、よりよい社会の実現のために日々奮闘される国税庁・税務署としては「個人の低圧は何個あっても全部、雑な収入だよ。雑収入。」「だって事業所得としてグリーン投資減税とか使われて散々経費積み上げて赤字にして、給与所得と通算しちゃったら俺達の食い扶持、いや、よりよい社会の実現のために必要な税収が不足するだろ。」「50kW超の高圧連系なら主任技術者を選任して保安規定の届出もするんだから発電事業として認めてやってもいいかもな、ただし個別に判断、もちろん俺達の主観でな。」というのが現状のようです。(ただし、ご自身の責任において国税庁・税務署に問い合わせをされ、証拠を残された上でのご判断をお願いいたします。)

相手が金をとりたくてしかたのない、いえ、よりよい社会の実現のために日々奮闘される国税庁・税務署です。そのゴリオシ、いえ、情熱に個人が簡単には勝てないと考えられます。

個人的な予想ですが、いずれは不動産賃貸の「(独立家屋なら)5棟・(アパートなら)10室・(駐車場なら)50台」と同様に「事業的規模」か否かを判断する基準が示されるのでは、と思います。もちろん、一般の給与所得者の手の届かないような高いハードルで。まあとにかく、50kW 1つでも2,000万円、年間の売上(売電収入)200万円のものを「雑」にしてしまう国税庁・税務署のセンスにはちょっと違和感を覚えます。

●法人の場合の所得税ってどうなのさ?

法人にも当然、その法人の所得に応じて税金がかかります。(広義の)所得税といえますが、(狭義の個人に対する)所得税ではなく、法人税(いわゆる法人所得税)が課せられます。法人税の場合には所得に「雑」か「雑でない」かといった区分はありませんから、税務署から「それは雑な収入だろ」などと失礼なことを言われることはありません。

●最後に

個人で50kW(未満)太陽光発電所を持たれる場合の所得については、事業所得か雑所得か、いろいろな議論があるところとご理解いただくことがまず必要です。その上で、その解釈は納税者が勝手にするものでも、税理士先生がするものでもなく、国税庁・税務署の中の人がするものであること、その解釈に文句をつけるにはかなりの労力が必要で、しかも勝ち目は薄いことをご認識ください。
ご自身の責任において国税庁・税務署に問い合わせをされ、確実な証拠を残された上でのご判断をお願いいたします。

コメント

  1. 西村 より:

    すごく価値の高い情報をまとめられているように思います。大変勉強になります。ワイン片手に読み進めていたのですが、頭がヒートアップしてきました。

    • fppvfppv より:

      コメントありがとうございます。
      日の当たらないところで、ちんまりやっているブログでございますので、気が向いたときにゆっくりお読みください。

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