影の影響について考える。

影の向きや長さは太陽の位置と、影をつくる物体の大きさで決まります。太陽光発電に影響を及ぼす可能性のある影としては以下のものが考えられます。

  • 周囲にある太陽電池モジュールや架台
  • 電柱・電線
  • 樹木
  • 建物

これらからどの程度離せば、影の影響を避けることができるのでしょうか。

まず、各季節・時間の太陽の位置と、影を作る物体の大きさ、そして三角関数(sin・cos・tan)で影の長さを計算することができます。

太陽の位置の計算は太陽高度(一日の変化)が便利です。365日全てについて検証をする必要はありません。1年で最も長く影が長くなるのは冬至ですから、最低限冬至について検証が必要です。ただし、年間を通じた太陽の動きを把握しておくことは無駄なことではありません。冬至1か月前(または後)、冬至2か月前(または後)、春分・秋分についても検証をすると年間の発電量をイメージしやすくなるのではと思います。

太陽の高度・向きがわかれば、そこから影の長さと(三角関数のうちtanを使います)、影ができる向きがわかります。影ができる向きを南北方向と東西方向の各成分に分ける(ここで三角関数のうちsinとcosを使います)と影の動きがわかりやすくなるでしょう。

日本の場合、影を作る物体から、その高さの2~2.5倍離せば(すなわち、高さ1メートルの物体からは2~2.5メートル離せば)影の影響はあまり大きくない(冬至でも昼間4~5時間程度は影がかからない)と考えられます。

現実問題としては、2.5倍も離せない、利用可能な土地が限られている、土地が高い、といった問題もあるでしょう。そのような場合は多少詰めて、冬の一部の時間帯には影がかかるという前提で設計、発電量の推計をすることになります。「冬の一部の時間帯に影がかかることのよる売電収入減」と「それを避けるためにより広い土地を確保するコスト(整地・フェンス・除草等の工事や作業も含む)」のバランスで検討することになります。

なお、影がかかることを前提に設計をする場合、太陽電池モジュール接続方法(直列・並列の結線方法)についても注意が必要です。パワーコンディショナの機能・特性にもよりますが、パワコンの入力電力の最大化のためには、「影になるパネルだけを直列に」「影にならないパネルだけを直列に」で、なるべく「影になるパネルがあるせいで全体の発電量が下がらないように」がよさそうです。(厳密には「パネルの種類」「影のかかり方」「パワーコンディショナの機能」等をよく検討する必要があります。)

土地が十二分にあって、連系受け入れ可能容量が限られていれば、ふんだんに土地を使えますから相対的に影の心配は少なくて済みます。しかし、現実的には「使える土地は限られている」「土地の購入に使える予算は限られている」ことが一般的です。

現地で影の影響を考える場合には、ざっくりいって、「影の長い冬にはそのものの高さの2倍から2.5倍の長さの影ができる」と考えておくとよいでしょう。東~南~西すべてについて、「高さhメートルのものが2.5hメートル以上離れた場所にある」のであれば、気にする必要はない、といえます。しかし、そう理想的な土地ばかりでないのも現実。冬は発電量が落ちることを覚悟してもう少し詰める、あるいは東や西に何かがある場合には朝・夕は発電量を期待しないなどといった妥協も場合によっては必要です。

●山・建物・木など周辺の環境

これは購入前によく検討を。買ってからの工夫では対応に限界があります。逆に、購入前に正しく検討できれば、その土地はいくらなら買いかというアプローチから購入をできるかもしれません。すでにお持ちの土地が、周辺の環境による影の影響をうける場合には、どのように太陽電池アレイ(モジュールを直列・並列につないだ集合体)を配置していくかなどの検討で、影の影響を最小限にしたいものですが、どうにもならない場合にはあきらめる、というのも選択肢です。

なお、木が近くにある場合には、落ち葉や鳥の糞にも注意が必要です。

●電柱・電線

細いものなので案外見落としがちですが、少しでも影の影響はそれなりにあります。細い棒や線だから大したことない、とは思わないほうがよいです。特にご自身の敷地の南東・南・南西側にこれらがある場合には注意をしてください。

●柵

安全面の問題がなければ高さはなるべく低くすると、影は当然短くなります。とはいえ、柵は安全対策のためのもの。太陽電池アレイの配置を考える際に、柵の影の長さも考えて配置を考えるとよいでしょう。南側にはゆとりをもって、東や西もそれなりに、北はアレイの裏がほぼすぐ柵、という配置になるかもしれません。

●周囲にある太陽電池モジュールや架台

太陽電池モジュールの傾斜角を大きくすると、影が長くなります。また、裏面に吹き上げる風の力も大きくなりますから、基礎・架台の設計がより重いものになります。敷地の大きさに制約があったり、影の長さが気になる場合には、数%程度(1~2%程度)発電量を犠牲にしても、傾斜角を小さくする、というのが現実的な対応になろうかと思います。

●こんな方法も

東に影になるものがある場合には、アレイ全体を少し西に向けることで、朝の発電量は若干あきらめて、夕方の発電量が多くなるようにする、という方法もあるのではと思います。

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