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年も改まって、「土地探しが間に合いそうもない」「提携ローンのある分譲物件探しに切り替えようか」という方も少なくないと思います。客観的に、どう比較・検討するかのポイントをまとめてみました。
●場所
たまには見に行きたい、という方なら検討のポイントです。自宅から日帰りで見に行ける範囲というご希望が結構多いようです。もっとも、投資商品と割りきり、リスクは保険でカバー、管理は委託というやり方もあります。
●主要な機材のメーカー・保証
太陽電池モジュール(パネル)やパワーコンディショナは最低限確認をしておきたいところです。日本メーカーのブランドであっても、海外生産の製品も少なくありませんから、”Made in どこ”に拘ることにはあまり大きな意味はありません。中国のメーカーであっても、信頼できるメーカーはあるかもしれません。信頼できるメーカーであり、保証が充実していて、太陽電池モジュールの場合は製品のばらつきが少ない(自動化ラインでの製造)などがポイントといえるでしょう。
なお、「25年出力保証」よりも、「10年間に不良があった場合の交換にかかる費用はだれが出すのか」がより重要です。(保険等での対応という選択肢も含めて。) 「25年出力保証」とはいっても、25年後まで本当にその会社が存在するのか、存在しても、輸送費は製造国内の輸送費のみメーカー持ち、その先は全部買主持ち、取替え費用も買い主持ち。そんな保証であれば使わずに、使えるモジュール(パネル)だけで発電できるように、モジュールの直列・並列接続を組み直すことが現実的かもしれません。
まだ、モジュールは組み直しがききますが、パワーコンディショナはそうはいきません。より慎重に選びたいものです。
●モジュールとパワーコンディショナそれぞれの容量
いくつかの物件を比較検討する場合、また、DIYでのケースや、自分で土地を用意するケースとの比較で価格の妥当性を検討するには容量を正しく把握することが必要です。「48kW」とあっても、これはモジュールの合計容量なのか、パワーコンディショナの合計容量なのかを正しく把握しなければ比較はできません。
同じ「48kW」でも、「モジュール合計48kW、パワーコンディショナ40kW」のシステムと、「モジュール合計60kW、パワーコンディショナ48kW」のシステムとでは、2割ほども容量が異なる、と言えます。
太陽電池モジュールの合計容量どおりに発電することはまれで、電気がパワーコンディショナに届くまでにも様々なロスがありますので、モジュールの合計容量がパワーコンディショナの合計容量よりも大きいことは珍しいことではありません。(が、あえて余裕のあるパワーコンディショナ容量とするケースもあります。技術的にどちらが正しいというのはありませんが、パワーコンディショナのお値段は結構するので、コストパフォーマンスとしては前者が有利かと思います。)
●土地は購入か賃借か
購入であれば毎年固定資産税がかかります。発電事業を止めた後に土地をどう処分するかも悩みのタネになるかもしれません。(土地の所有者には固定資産税がかかり続けます。)
賃借であれば借り主には固定資産税もかからず、賃貸契約の期間の定めにしたがって、土地を返すのみで済みます。ただし、20年間の総額で考えると購入よりも割高であることが多いこと、「もう少し発電事業を継続したい」というときに対応ができるか、銀行等金融機関からの借り入れの際に土地が賃借の場合には不利であることが多いなどのデメリットがあります。
●管理・保証・保険
分譲物件ではおもに売主業者さんに管理を委託できることが多いです。その内容やそれ係る費用、機器メーカーによる保証内容、保険によるリスクヘッジなどで、どのようなリスクがカバーできて、どのようなリスクがカバーできないのかをよく整理する必要があるでしょう。
●広告の内容
利回り計算の方法・記載内容が良心的か、利回りの高さばかりを強調して実際にかかる費用やリスクの説明を軽視していないかなどから、その売主業者さんの姿勢が読み取れます。発電量のシミュレーションはどのような計算式でなされているのか、それは根拠があるものなのか、妥当なものなのかの判断も必要でしょう。
余談ですが、ホームページのお問い合わせ先の電話番号などの横あたりによくある写真のきれいなお姉さん、本当に電話の向こうにいると思わないほうがよいです(笑)。
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●お値段
これを比較・検討の項目に入れない方は少ないと思います。分譲案件の金額の中身は、各段階(土地の仕入れ・造成・機材調達や据え付け・系統連系に係る確認や手続きなどなど)と、分譲案件の売主さんのコスト・利益です。内訳になんか興味ないよ、利回りがよければ、という方もいらっしゃるかもしれませんが、おおよそでもこれらのコストを知っておくことは有用かと思います。
【土地】
仕入れと造成ですが、安い土地だと造成費が多くかかる、系統連系に至るまでに様々なコストがかかる(電柱の建て増し・低圧配電線の延伸など)があります。土地そのもの値段だけで「高い」「安い」の判断はできません。また、ご自身でこまめに見に行きたい、という方の場合には多少土地が高くても、便利なところのほうがよい、との判断もあるでしょう。
太陽光に適した環境の土地(日当たり良好で低圧配電線電柱が敷地に隣接)という前提で、土地単体のお値段では3,000円/坪ならかなり安い、8,000円~10,000円/坪なら市街地・住宅地の近くならあり得る金額といった感じでしょうか。固定価格買取制度での買取単価の設定の際の前提は年間賃料150円/平米となっています。(平成25年度調達価格検討用基礎資料(平成25年1月21日(月)・資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部) 年間500円/坪に相当します。購入となると、その10倍ないし15倍くらいの金額になるのかなと思うと、5,000円~7,500円/坪あたりをお上は想定しているのかなと思います。
【機材】
機材調達や据え付けのコストは相場があります。いろいろなところで情報収集をすればある程度は見えてくるでしょう。太陽電池モジュール60kW程度、パワーコンディショナ50kW弱(49.5kWなど)で、架台・工事費までを含めると、1,100万円~1,600万円程度でしょうか。(メーカーや商品構成によってかなり異なります。) これに土地代(造成を含む)が200~300万円、付帯工事(フェンスなど)や、連系費用やらもろもろを上乗せして最終的には2,000万円を下回ったり上回ったり、そんなイメージです。2,000万円を超えていると高いなどと即断できるものではありません。有名なメーカーの製品、丁寧に設計されたシステム構成、しっかりしたフェンス、丁寧な施工、それぞれコストがかかるものです。(逆に安いからといって、質が悪いと断定できるわけでもないのが難しいところです。)
●売主業者さんの対応
土木工事・電気工事・系統連系手続きなどなど、売主業者さん(あるいはその協力(下請)業者さん)には幅広い工事・作業への対応が求められます。これら個々の工事・作業の経験をすべて自社でお持ちの業者さんというのはそう多くはありません。協力(下請)業者さんを使うことが普通とお考えください。
と、なると売主業者さんには「協力(下請)業者さんをしっかり管理・監理する能力」も求められます。工事中の管理・監理や、工事後のアフターサービス・クレーム対応もその範疇ですが、それに限らず工事前・販売中の段階でも、当然、協力(下請)業者さんがどのような内容・方針で作業を行うのかを管理・把握していて当然です。
買主にとって、契約相手は協力(下請)業者さんではなく、売主業者さんです。売主業者さんが(個々の作業の細かいことはさておき)全体を管理・把握して、協力(下請)業者さんの作業を適切に管理・監理し、売主業者さんとしての責任を果たすかどうかを見極めることが買い主には求められます。なんでもかんでも「それは協力業者に聞かないとわかりません・・・」という売主業者さんには要注意です。(購入後何か問題があったときにはさらに逃げ・責任転嫁をするものです。)
ここまで、おおむね、現地へ行かなくても材料の揃う項目をまとめてみました。
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現地で確認するポイントについて、これは分譲案件に限ったことではありませんが、まとめてみました。
●ご自身にとって便利か・いい場所か
高い買い物ですから末永く愛着を持って現地へ通いたいものです。(投資と割りきって管理はすべて業者さん等におまかせという選択肢も否定はしませんが・・・。) しょっちゅうなのか、時々なのかは人それぞれですが、今後この場所に通うことについて、便利か・いい場所かをまず考えましょう。
●近隣の環境
木・森・山・建物などで影はかからないか、周辺に急に建物ができる可能性はないか、近隣との関係(どんな人が住んでいるのか)等、押さえておきましょう。中には「お前の金儲けのために俺たちの電気代が上がって困る」などと文句を言われることも。
崩れそうな崖・斜面が近くにないか、そのようなものの上に敷地が位置していないか、水はけがいいかも要チェックです。一般的な木や草は、夏の期間の成長を想定してその対策を考える必要がありますが、竹や笹には特に要注意です。整地の前に根こそぎ除去しておかないと、急速に成長して影ができるだけでなく、下から太陽電池モジュール(パネル)を突き破って破壊することすらあります。
●電柱・電線の場所
電柱・電線も影をつくりますから要注意です。また、区画まで電線・電柱が来ていない場合にはこれから建つわけですから、どのように建つのか(経路・高さ等)を確認しておきましょう。
●影については要注意
真南だけでなく、東~南~西について、影をつくる原因となるものがないかを確認しましょう。目安は「高さ1メートルのものがつくる影の長さは、影の比較的長い冬の、太陽光発電に関係のある時間帯である昼間の4~6時間程度だけで計算する(朝夕の極端に影の長い時間を除くと)と、南北方向に対しては2~2.5メートル」です。なお、東・南東や南西・西側にあるものも、もちろん影をつくり、太陽電池モジュール(パネル)にかかることもあります。「日当たりがいい!」が本当に「1日中日当たりがいい!」のかを現場で確認しましょう。
かかる影について事前に納得していれば大きな問題はありませんが、特に分譲案件では、「日当たりいいです!」くらいの勢いで影のことを真剣に検討されずに購入される事例が多いように思えます。売主業者さんにすれば、電力会社側の受け入れ可能容量の範囲で区画を詰め込めば詰め込むほど都合がよいわけですから、相当に無理をして太陽電池モジュール(パネル)を敷地に詰めて並べている可能性もあります。
1年を通じて冬でも日の出から日の入りまで一切影がかかりませんというのは理想かもしれませんが、それは現実的ではありませんし、土地がやたらと広ければ土地代、除草・防草費用、固定資産税等も余計にかかりますから、コスト面でベストでないかもしれません。影がどのようなケースでかかるのか、その条件をしっかり理解(売主業者さんとの間でも)しておくことが、売主業者さんとの間でいやな思いをしなくてもいいようにするためにも重要なことかと思いますし、その条件が設計・施工業者さんにも伝わっていて、そのとおりに施工がされるのかはチェックポイントです。
「冬至でも少なくとも昼間6時間は太陽電池モジュール(パネル)に影がかからない」という線の引き方も1つの方法です。ただ、「6時間」を「4時間」にするだけで、必要な土地の面積が1割以上減ります。冬のごくわずかな時間の発電量と、土地のお値段の天秤をかけて考える必要があります。
ネット上だけの情報収集、売主業者さんからの情報のみで購入を決めてしまう例も少なくないと聞きますが、売主業者さんも商売です。買主の利益と売主の利益は相反することが一般的ですから、やはり現場は実際に見て、買主ご自身で、買主の責任において購入するか否かの判断をしてください。(当ブログ主にご相談をいただくこともありますが、現場を見ずにお答えできることは限られてしまいます。)
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