運転維持費とかと、固定価格買取期間後を考えてみた。


世の中には、発電設備を作って即時償却することだけが目的で、発電設備を野生化させているという一般ピープルには理解したがいもったいない事案も散見されますが、20年過ぎてもできるだけやりたい派の方も多いのではないしょうか。

固定価格買取期間終了後、すでにこれまでの20年間で設備のモトはとった、土地購入代金のモトもとった、そんな状態になっていると思いますが、そんな状態で、発電事業は成り立つのかを想像してみます。

まず、お上が集計している数字です。

令和3年度以降の調達価格等に関する意見
令和3年1月27日(水)調達価格等算定委員会
https://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/pdf/20210127_1.pdf

<事業用太陽光発電の運転維持費>

昨年度の本委員会では、直近の期間(2019 年1月から 2019 年9月まで)に収集した定期報告データを分析し、10kW 以上全体の平均値は 0.55 万円/kW/年・中央値は 0.44 万円/kW/年、1,000kW 以上の平均値は 0.64 万円/kW/年・中央値は 0.59 万円/kW/年となっており、想定値(0.5 万円/kW/年)と概ね同水準であることから、想定値を据え置いた。

今年度も直近の期間(2020 年1月から 2020 年9月まで)に収集した定期報告データを分析した結果、10kW 以上全体の平均値は 0.54万円/kW/年・中央値は 0.44 万円/kW/年、1,000kW 以上の平均値は0.64 万円/kW/年・中央値は 0.57 万円/kW/年となっており、引き続き想定値(0.5 万円/kW/年)と概ね同水準であった。(参考 15)

一般に、低圧・高圧・特別高圧それぞれのカテゴリーの中で、規模の小さなものは割高になりがちです。高圧持ち・特別高圧持ちの方は当ブログの読者の中にはあまりいらっしゃならいと思います。特別に高圧的な方はたまにいると風の便りで聞きますが、気にしないことにします。ので、低圧のカテゴリーの中で、規模が大きい(割安)なものを想定して、(50kW未満ということで)50kWぎりぎりで計算をしてみようと思います。

0.5万円/kW/年ということは、50kWだと、税抜25万円/年ということになります。土地が賃借の場合の賃料や、土地が購入の場合の固定資産税もここに含まれています。土地が購入の場合を想定してみます。

  • 土地の固定資産税 1~10万円/年くらいまで様々
  • 設備の固定資産税 ほぼなし
  • 損害保険料 現状では3~5万円/年
  • 点検費用(きちんと電気工事士さんに見てもらう・年に1回を想定) 3万円/年
  • 通信費・遠隔監視システム使用料: 1~3万円/年
  • 草刈とか自主点検相当額 3万円/回相当×3回/年
  • その他修繕費相当: 人それぞれ・設備の状況や長期計画次第(まだまだやるか、そろそろやめるか)

これを合計すると、「17~30万円+α」になりますから、お上の想定している25万円はおおむね妥当と言えるでしょう。

さて、売電収入はkW単位ではなく、kWh単位ですから、ちょっと換算しないといけません。上記のkWと同じく、規模が大きい(割安)なものを想定して、ダブル過積載級(パワコン49.5kW、パネル99kWとか)、北関東とか日射量がある程度よいエリア、もちろんいわゆる過積載のいわゆるピークカットも考慮して、さらにパネルの経年劣化も考慮した後の値として、9万kWh/年売電できると想定してみます。(新設時10万kWh/年→20年後9万kWh/年という想定です。)

9万kWh/年の売電収入から、17~30万円/年の運転維持費を捻出するということは、買取単価のうち、1.9~3.3円/kWhが運転維持費に消える、ということになります。

将来の買取価格がどうなるかはわかりませんし、将来は時期や時間帯によっても買取価格が変動することも考えられます。とりあえず昨今の卒FITの買取単価の税込み7円/kWhとか税込み8円/kWhあたりを想定してみると、売電収入の1/4~半分が運転維持費で消えるということですから、手元に残るのは売電収入の半分とか3/4ということになります。

9万kWh/年と、税込み8円/kWhから計算すると、年間の売電収入は税込み72万円(消費税10%で計算すると税抜65万円)、運転維持費を税抜17~30万円とすると、手残りは35~48万円/年、そんなイメージになりそうです。

維持管理を相当に省力化・少コスト化できる事業者、あるいは利益はあまり追わない・少々手残りができるくらいで十分な事業者(おじいちゃんのお小遣いになればいい系)なら十分にやっていけるのかなというイメージでありますが、「もうやってられねー」と、放置モードになる事業者もかなり出そうな感じではないかと思います。

もちろん、放置・野生化・野良ソーラー化はよろしくありません。見通しは立てつつも、手放すなら計画的に、のんびり発電を続けるならそれなりの心構えで。そんなことを考えないといけないタイミングが、ここ5年・10年くらいでやってきます。自主的・自発的に事業の譲渡・集約を進めていくことも必要なのかもしれません。

他の事業と比べると収入は予測しやすい太陽光発電事業ですが、ク●物件であれば安定したク●収入でありまして、耐えれば耐えるほど痛みが増すことにもなりかねません。特に、収支面で無理をしているような事業(やりたい放題系分譲ヤーさんのシミュレーションを信じてしまったものなど)については、損切あるいは早めに出口を考えていくことは重要かと思います。

お上におかれましては、後出しジャンケンで中小零細を痛めつけることはせず、しかしながら、放置・野生化・野良ソーラー化とはならないように、健全な事業者については生かさず殺さずでお願いしたいと思います。

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