当ブログ主的には九州といえば、「いも九」「JR九州」ですが、そんな今日このごろ、春の風物詩といえば九州電力管内の出力制御。今年はちょっと様相がちがうようで、結構厳しいとの評判のようです。
文句を言っている方は当然、公式のお知らせくらいは読んでいると思いますが、念のため、こちらです。
再生可能エネルギー出力制御見通し
https://www.kyuden.co.jp/td_power_usages/pc.html#saiene
例えば、2021年4月11日(日曜日)の実績(速報)を見てみましょう。単位は万kWです。kWhとかMWhといった電力量ではなく、最大余剰電力が発生する瞬間の電力です。
最大余剰電力発生時刻 12時00分~12時30分
エリア需要(注1) 752
大容量蓄電池の充電・揚水運転(注2) 178
域外送電(注3) 184
小 計 1,114供給力(注4) 1,449
(再掲)再エネ出力 826再エネ出力制御必要量 335
(注1)最大余剰電力発生時刻におけるエリア需要
(注2)揚水発電所を最大限活用
(注3)関門連系線を最大限活用し、域外へ送電
(注4)優先給電ルールに基づき火力発電等を最大限抑制(参考) 2021年2月末設備量 1,084万kW(太陽光:1,025万kW、風力:59万kW)
太陽光の設備容量は2021年2月末現在1,025万kWとなっていますが、内訳を探してみると、こちらに2020年9月末現在の値がありました。
2021年度の再エネ出⼒制御に向けた対応について
第28回系統WGプレゼン資料 資料2
2020年12月11日 九州電⼒送配電株式会社https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/shin_energy/keito_wg/pdf/028_02_00.pdf
太陽光発電は、2020年9月末時点の導⼊量998万kWのうち、約6割に相当する595万kW(下表⾚枠)が出⼒制御対象。
「下表赤枠」の内訳ですが、こうなっていました。
- 旧ルール事業者 出力制御対象(30日) 282万kW(2.82GW)
- 指定ルール事業者 出力制御対象(無制限) 313万kW (3.13GW)
さて、998万kWとか、282万kWとか、313万kWは設備の容量、その一方で、制御必要量の335万kWは実際に出力される容量がベースですので性質が異なります。しかし、九州電力管内の場合には「最大余剰電力発生時刻」は太陽光の出力が相当に大きい時間帯であることは明らかで、太陽光発電設備の容量に対してほぼフルの出力が実際に出ることが想定されます。ということで、ここでは、イコールということにしておきます。
282万kWと313万kWの合計である595万kWのうち、335万kWを制御しなければならないわけで旧ルール・指定ルールの区分を仮に無視したとした場合、平均で55%程度を制御する必要があります。
しかしながら、実際には無視することはできませんから、旧ルール事業者に関しては年間に30日を上回ることがないように計画的に制御指示を行うこととしつつ、残りは指定ルール事業者に制御指示することになります。
「2019年度には延べ74回、1事業者当たりでは旧ルール事業者23~24回、指定ルール事業者15~16回。2020年度は延べ70~80回、1事業者当たりでは旧ルール事業者20~25回、指定ルール事業者10~15回の見込みという。」とのことでした。極めて丸めると、旧ルールも指定ルールも300万kWずつ、制御しないといけないのも300万kWという規模感(上に書いた、282万kW、313万kW、335万kWのことです)から、おおむね、延べ80回(日)のうち、30回(日)は旧ルール事業者、残りの50回(日)は指定ルール事業者という感じになるのでしょうか。
ということで、おそらくですが、(旧ルール事業者を制御できる「枠」は5月以降のために温存しておいて)、指定ルール事業者の出力を絞る指令が、4月早々から勢いよく指定ルール事業者に飛んできたということになると思います。
- 九州本⼟においては、太陽光接続量が1,000万kW程度となり、接続可能量(30日等出⼒制御枠)の817万kWを200万kW程度超過し、今後も引き続き太陽光の接続量増加が⾒込まれる状況。
- これに伴い、2021年度の旧ルール事業者の年間出⼒制御日数は30日に到達する⾒込み。
- 年間出⼒制御回数が30日に到達した以降は、過去の系統WG(第9回:2016.11.25)
において、指定ルール事業者の制御日数が⼤きく増加しないよう、旧ルール事業者の年間制御日数30日を最⼤限活⽤しながら、指定ルール事業者は⼀律制御に移⾏するように整理されており、2021年度の具体的な出⼒制御の運⽤⽅法について報告。
需要が少ない昼休み、天候のよいこの時期、太陽光がたくさん発電する時間帯に出力制御の指示が出ることは、九州で太陽光発電「事業」をされている方なら何をいまさらプンスカなのという感じではあるのですが、「指定ルール事業者には●時から●時まで全部出力をゼロとするよう指示したよ」「旧ルール事業者には今回は指示していませんが、5月くらいの一番美味しい時期をメインに30日しっかり指示するよ」くらいのお知らせはあってもいいのでは思いました。(クレーマーのようなお電話を減らすためにも)
ざっくり計算ですが、パネル容量80kW・パワコン容量49.5kWみたいな低圧太陽光発電設備で90,000kWh/年、春や秋の好天日で450kWh/日のそれぞれの発電量、そのうち昼間の2~4時間程度の発電量である100~200kWh/日が出力制御対象になると考えると、50日×100kWh(ないし200kWh)÷90,000kWhで5.6%から11.1%くらいになるのかなという感じが今の時点ではします。
ただ、九州電力さんも再エネ自体には恨みがあるわけではない(荒っぽいクレーマー的な事業者にはいろいろと思うところはあると思いますが)ですから、今年度から始まった一律の出力制御のやり方をチューンナップしていったり、旧ルール事業者には長い時間に制御がかかるような日を制御対象日にして、指定ルール事業者の年間の制御量をなるべく小さくするように調整したりすることで、あまりえげつない率にはならないように下げていく、そんなことを考えているのではと思います。
ちなみに優先給電ルールとはこちら。
出力制御についてhttps://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/grid/08_syuturyokuseigyo.html
電気の発電量がエリアの需要量を上回る場合には、まず火力発電の出力の抑制、揚水発電のくみ上げ運転による需要創出、地域間連系線を活用した他エリアへの送電を行います。それでもなお発電量が需要量を上回る場合には、バイオマス発電の出力の制御の後に、太陽光発電、風力発電の出力制御を行います。これは「優先給電ルール」と呼ばれ、需給バランスを維持するための手順としてあらかじめ法令等で定められています。この制御の順番には各発電の発電コストや技術的特性が関係しています。水力・原子力・地熱は「長期固定電源」と呼ばれ、出力を短時間で小刻みに調整することが技術的に難しく、一度出力を低下させるとすぐに元に戻すことができないため、最後に抑制することとされています。
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